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身体拘束とは

身体拘束とは

利用者・家族のための身体拘束問題入門

Q1 高齢者に対する身体拘束とはどんなものか

 高齢者への身体拘束とは、施設や病院などで、認知症などの高齢者を、「治療のじゃまになる行動がある」、あるいは「事故の危険性がある」という理由で、ひもや抑制帯、ミトンなどの道具を使用して、ベッドや車椅子に縛ったりすることをいいます。部屋に閉じ込めて出られないようにする、あるいは、向精神薬を飲ませて動けなくすることも身体拘束となります。下の写真をご覧下さい。これはいまから6年前、ある老人病院で撮られた身体拘束を受けている患者さんの写真です。一見されただけで身体拘束をされると利用者が非常に惨めな、人間としての誇り・尊厳を奪われた状態になることがおわかりいただけると思います。厚生労働省は、介護保険の適用を受ける施設では、必要やむをえない場合でない限りこのような身体拘束をすることを禁止しています。※1
けれども施設によっては、まだ、その規定に従わず慣習的に身体拘束を行っているところもあります。

[写真1]
まず、ご質問の方のように、鼻腔に入れられたチューブを抜かないように縛られている方の写真です。チューブから栄養物を注入する時間だけ拘束をする施設もあります。この施設は1日この状態で拘束しているようです。

写真1

[写真2]
つぎは、ミトンという手袋をつけられている方の写真です。からだを掻いたり、おむつをはずしたりすることができないようにこの手袋をつけられています。この方もずっとこの状態です。

写真2

[写真3]
この方は、お腹のところを縛られています。胴抑制といいます。自分でベッドから起きて歩き出したりしないように、あるいはベッドから転落しないように帯のような道具でベッドに固定されています。

写真3

[写真4]
4点柵といわれるものです。ベッドのまわりを柵で完全に囲んで、下りられないようにしてあります。よくこれを乗り越えようとしてかえって事故が起こったりします。

写真4

[写真5]
次の方は、酸素や点滴の管をいじらないように手首をベッド柵に縛られています。ご様子からは、終末期にあると思われ、おそらくこの状態のままで息をひきとられただろうと思います。

写真5

[写真6]
車椅子に縛られることもあります。車椅子から立ち上がって歩き出そうとする方、車椅子からずり落ちそうになる方などがこの車椅子ベルトで拘束されます。車椅子はあくまで移動用で長時間座るようにはできていません。この姿勢で車椅子にずっと座らせ続けられるのも苦しいものです。

写真6

[写真7]
これも車椅子拘束の1種です。車椅子にテーブルを固定してそこから出られないようにしています。ご自身の状況に悩み絶望されておられるのではないでしょうか。

写真7

[写真8]
分かりずらいかも知れませんが、赤い直線が、室内におられる方の目の部分です。赤く○で囲んだのが鍵の部分です。鍵のかかる部屋に閉じ込められた利用者の方がカメラのほうを見ています。

写真8

※1ちなみに、厚生労働省は、次の11種類が身体拘束・抑制にあたるとしています。(一般の方にもわかりやすい言いまわしに変えています。)
1,歩き回らないようにベットや車椅子に胴や手足をひもなどで縛り、歩けなくする。
2,ベットなどから転落しないようにベットに胴や手足をひもなどで縛り、動けなくする
3,ベットの周囲を柵などで完全に囲んだり、高い柵を使用するなどして自分では降りられないようにする。
4,点滴や、鼻やおなかなどにつける栄養補給のチューブなど治療のための器材を自分で抜かないように、手足を縛ってしまう。
5,点滴や、鼻やおなかなどにつける栄養補給のチューブなど治療のための器材を自分で抜かないように、あるいは皮膚をかきむしらないように、指を思うように動かせなくするミトン型の手袋などを使う。
6,車椅子やいすなどからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型の専用ベルト、腰ベルト(紐)などで車椅子・椅子に縛りつけたり、胴にぴったりと密着するテーブルをつけて立ち上がれないようにしてしまう。
7,立ち上がる能力のある人を、座面を大きく傾かせたりする椅子に座らせるなどして立ち上れないようにする。
8,服を自分で脱いでしまったり、おむつをはずしたりしてしまう人に、介護衣(つなぎ)とよばれるような、自分では脱ぎ着ができない特殊な服を着させる。
9,他の人に迷惑をかけないように、ベットなどに胴や手足をひもなどで縛る。
10,興奮したり、穏やかでなくなったりした人を落ち着かせるために、鎮静させる効果がある精神に作用する薬(向精神薬)を過剰に使って動けないようにしてしまう。
11,鍵をかけるなどして自分では空けられないような部屋に閉じこめる。


Q2 身体拘束はどうして悪いのか 

A 多くの弊害があり、そのために亡くなる人もいます。

身体拘束をされると、肉体的に何時間も、あるいは何日も同じ姿勢をずっととらされたり、狭い空間の中に閉じ込められたりしますから、その苦痛ははなはだしいものになります。また、拘束をされる多くの方は認知症の方ですから、どうして縛られるのかご自身では理解できません。それでいきなり縛られたり閉じ込められたりするのでとても不安になり怖い思いをします。これらは身体拘束の「目に見えるわかりやすい害」です。
身体拘束には、さらに「目にはよく見えないけれども重大な害」が潜んでいます。たとえば、縛られたおとしよりは、例え少しの期間であっても、食欲が低下したり、脱水を起こしたり、褥創ができやすくなります。ふしぶしの関節が固くなり、筋力が低下して起きられなくなり、そのまま寝たきりになることもよくあります。活動範囲が極端に狭くなると心臓や肺の機能も低下しますし、感染症に対する抵抗力も落ちてきます。すると、かぜから肺炎となったり、あるいは、褥創や尿道から感染が発生したりと、感染を繰りかえす状態に陥り、衰弱が進みます。それが原因で亡くなることもあります。また、精神的には、認知症が進行して荒廃状態になったり、最初は身体拘束に抵抗していたおとしよりもやがて諦め、生きる意欲を失っていきます。

Q3 手術後などは誰でも身体拘束をされたりするが、それとは違うのか。

A 若い人への身体拘束とは違い、おとしよりへの身体拘束は、長期間になる、身体拘束がさらに拘束を呼ぶ悪循環になりやすい特徴があります。

高齢者への身体拘束は長い期間、慢性的に行われやすく「悪循環」に陥りやすいという性質をもっています。例えば、認知症のおとしよりが徘徊するので身体拘束するとなった場合、認知症による徘徊症状は簡単には収まらず、ずっと続くものですから、「足が弱って歩けなくなるまで」長期間にわたって身体拘束を続けるということになりがちです。それから、例えば、徘徊する認知症高齢者の方を身体拘束してしまう。すると、昼間活動する量が減ってしまうので、夜、起きて騒いだりしてしまう。今度は、それを「問題行動」だとして、向精神薬を多量に使うと、その薬の作用が昼まで残ってしまい、足取りが危なくなる。するとまたその危険性を理由にして身体拘束を行う・・・。結果、だんだん食欲が落ち、栄養や水分を補給する目的でいろいろな医療処置が行われ、こんどはその治療処置を抜き取ろうとすることを理由に身体拘束が行われ・・・。という具合に、身体拘束が身体拘束を呼ぶという、悪夢のようなことも現実に起こりえます。その結果高齢者がなくなることを私たちは「抑制死」と呼んでいます。これは決して「理屈」ではなく、多くの高齢者が身体拘束の悪循環の結果、衰弱し、やがて死んでいったという経験に基づいて定義した考え方です。

Q4 身体拘束をはずすと事故がふえるのではないか。

A かならず増えるというものではありません。

身体拘束をする主な理由は「事故を防ぐ」ということです。認知症の方が徘徊をすると転倒して、骨折する可能性があるからベッドに拘束する、点滴中にチューブを引き抜くと危ないので、手をベッド柵に縛り付けて動かなくする、などなどです。では本当に身体拘束をはずすと事故は増えるのでしょうか。ここに2つの調査結果があります。それらによれば、必ずしも身体拘束をしないことと事故が増えることが一直線に結びつくものではないということがわかります。まず、平成17年12月に発表された調査※は、施設が「身体拘束をやめる」取り組みを始めてから事故が増えたかどうかを調べています。結果、事故の種類によりばらつきはあるが、およそ6~8割の事故については変わらないという回答となっています。事故を種類別で見ると、転倒や転落は、身体拘束をやめた後に増えたと回答した施設が減ったと回答した施設よりも多くなっています。しかし、反対に骨折や強度打撲といった大きな事故については、取り組み開始後に減った施設が多いという結果でした。
平成21年に当会が行ったアンケート調査では、身体拘束を一切やめる方針の施設とそうでない施設とを比べてみました。結果、骨折事故件数では、特別養護老人ホームや老人保健施設では、年間0.4~0.5件身体拘束を止める方針の施設の骨折事故が、そうでない施設を上回っていましたが、反対に介護療養型医療施設やグループホームではいずれも0.4件下回るという逆の結果がでてきました。また、死亡事故や後遺症を残す「重傷事故」の発生件数では、特別養護老人ホームでは年間平均、0.1件、グループホームでは0.2件、身体拘束を一切やめる方針としている施設の重傷事故件数が、そういう方針ではない施設の事故件数を下回っているという結果が示されました。これらの調査結果からは、身体拘束廃止の取り組みと事故との関係は一律ではなく、身体拘束をするという方針の施設が、しないことを方針としている施設より骨折事故や重傷事故が少ないとは一概にはいえないことを示しています。
これはどうしてでしょうか。おそらく、身体拘束をしないためには、施設の職員は、まずひとりひとりの利用者の方をよく観察し、どういうところに危険性があるか把握するようになります。その上で事故を防ぐ対策を行うのですが、この、緊張感を持続し、ひとりひとりの利用者に注意を向け、いろいろな工夫策で対応することが、施設全体の事故数が増えないという結果につながっているものと考えられます。

Q5 身体拘束をせずに事故を防ぐための工夫とはどういうものか

A 身体拘束に代わるさまざまな工夫があります。

例えば、認知症の方は、点滴を引き抜いたりします。これをどう防いだらよいでしょうか。点滴の際、普通に、ひじの裏側のところに針を刺せば、点滴のチューブが視線に入り、認知症の方はいたずらしたり、抜きたくなったりします。が、針をさす部位を足にして、チューブを着ている服の背中を通すようにすれば見えなくなり、利用者が気づかないうちに点滴を終えることが出来ます。鼻から栄養物を入れるチューブを抜いてしまうという「いたずら」に対しても、チューブを通して栄養補給している間、看護記録などを書きながら、その利用者の正面や側面にスタッフが付いて見守っていればいいわけです。あるいは気を紛らすためにぬいぐるみなどで遊んでいていただくことが有効なことがあります。ベッドから転落するのが危険であれば、ベッドの高さを低いものにしてみるのも手かもしれません。そういった身体拘束をせずに事故の確率やそのダメージを減らす工夫は多くあります。施設で働く職員用のものでちょっと難しいのですが、このホームページに、施設職員が身体拘束をはずすために試みるためのいろいろな工夫を掲載していますのでご覧になってみてください。 [資料集ページへ]

Q6 どのくらいの人が拘束をされているのか

A 介護保険関連施設では入所者の3.1%という数字があります。

 高齢になられた方が高齢者施設や病院を利用する際に、「身体拘束を受けた。」あるいは「施設側から身体拘束をするかもしれないから同意書を前もって提出しろといわれた。」こういう経験のある方、同じような話を聞いたことのある方も多いと思います。当会が行った調査(平成22年3月まとめ)では、介護保険三施設(特養、老健、介護療養型医療施設)およびグループホームでは、入所者の3.1%、人数にして毎日約3万3000人の高齢者が身体拘束を受けているという結果でした。そのうち8000人は厚生労働省がいう「必要やむを得ない場合」ではないのに身体拘束をされていることも分かりました。(この必要やむをえない場合ではないのに身体拘束することは、法的には「高齢者虐待」に該当します。)
 高齢者が利用する病院や施設はこれだけではありません。有料老人ホームや寝たきりの高齢者だけを集めたような高齢者向け住宅などもあります。また、医療保険で運営されている一般病院や療養病床にも大勢の高齢者が入院しています。私たちの調査では、身体拘束が禁止されている介護保険の病院ですら、患者の12.7%が身体拘束をされていました。とすれば、身体拘束禁止の規定がない医療保険で運営されている病院では高齢者はそれ以上の割合で身体拘束を受けていても不思議ではありません。そういう推計をして行くと、すくなく見積もっても10万人以上の高齢者が毎日、身体拘束をされているという数字になってきます。例え今日は縛られていなくても、非常に高い確率で、明日は身内の高齢者の誰かが、そして、将来はみなさんご自身が身体拘束を経験することになります。身体拘束は非常に身近にある問題です。

Q7 どうして身体拘束が多い施設と少ない施設があるのか

A 施設全体で身体拘束をやめると決めるかどうかがポイントです。

平成12年、介護保険が始まり、介護保険で運営される施設では身体拘束は必要やむをえない場合にだけ許されるという、「原則禁止の規定」が実施されました。それまで身体拘束にいわば慣れてしまっていた施設では、急いで拘束を減らすこと取り組みを始めました。その結果、身体拘束されている人は平成21年現在で、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、グループホームという4つの施設平均で3.1%という数字になっています。100人に3人が身体拘束されているということですが、これでも介護保険が始まった当初と比べると大きく改善した数字です。ただし、まだ、施設ごとに大きなばらつきがあり、旧態然たる施設もあります。当会の調査では、利用者1割以上に身体拘束をしている施設が、全国でまだ1割以上もあるという結果になっています。
施設が身体拘束をやめるためには何が一番効果的でしょうか。それは、「一切拘束は止めよう」という方針を明確に打ち出すことです。私たちの統計では、明確に身体拘束を一切しないという方針を打ち出した施設での利用者を拘束する率は0.2%でした。そういう方針を打ち出さなかった施設では平均4.7%の利用者に身体拘束を実施していました。そういう歴然とした差があります。つまり、身体拘束は、施設が一切やめにするという意気込みで取り組むと格段に減り、0にすることもできる。しかし、身体拘束に対する方針があやふやだと減らすことができない、そういう施設の姿勢・意欲に大きく左右されるものです。

Q8 身内が身体拘束をされているがどうしたらいいか

A 利用者の尊厳、事故のリスクについてきちんと考え、それを施設側に伝え、一緒にケアに参加すること。

介護保険の関連施設では、身体拘束を行う場合には利用者・ご家族に説明し、書面による同意を求めていると思います。また、利用者へ提供するサービスは利用者・ご家族の同意を得たケアプランによって実施されます。身体拘束をしている場合には、このケアプラン作成の際にも、身体拘束に代わるケアをさがしたこと、しかしそれが見つからないために身体拘束をすることになったという、検討の過程が明らかにされていなければなりません。まず、これらの点を明らかにしてその身体拘束の理由が納得のいくものであるかどうかを検討してみてください。
その際、大切なのは、利用者・ご家族として、身体拘束や事故についての意思・姿勢をきちんとお持ちになってご相談をされることです。あいまいであると、施設側の説明をそのまま受け入れるしかなくなってしまいます。
意思をはっきりさせると申し上げましたが、よく、「身体拘束をしないで下さい。絶対に事故を起こしてもらっても困る。」という方がおられます。お気持ちはわかりますが、それでは介護現場では現実的な話にはなりません。
高齢者の心身の機能が低下し衰えていくことは自然の摂理でありやむを得ないことです。その結果、事故のリスクも増えます。これに対して高齢者の尊厳と安全との両立を「100%はかる」ことができればベストですが、それは不可能です。例えば転倒事故を恐れて、高齢者をベッドに縛ってしまえば、表面的には転倒・骨折事故を防いでいるように見えても、自由は奪われ、こころも体もひどい苦痛にさらされることになります。高齢者を衰弱させ死を早めるという結果をもたらすことにもなります。やはり、一定のリスクを取らなければ、尊厳をもって生きられないというのが人間の運命であり、認知症高齢者の場合も例外ではありません。
一方、ご家族によっては「職員のみなさんに迷惑をかけるといけないから身体拘束をして下さい。」、「骨折でもしてまた入院されると大変だから。」という方もあります。これもまたお気持ちは分かりますが、できる限り「高齢者その人にとってどうであるか」という視点に立ってお考えをいただきたいと思います。職員の都合、ご家族の都合だけで判断されてしまえば、高齢者の尊厳や苦しみが無視されることになります。近しい身内の方であっても、別人格としてその代弁や権利擁護を図るという立場をおとりになるのが適切と思います。
その上で、具体的には、施設の相談員や介護の責任者を通して相談し、身体拘束に代わる方法はないのか、あるならばそれを使った場合のリスクはどんなものか、話し合いを持つようにします。
施設の職員も多くの場合、身体拘束をしたくてしているわけではありません。たいていは、「事故が怖い。ご家族からのクレームが怖い。」「人手が少ない」そういう理由で拘束を行っています。そこをご家族にもご理解していただき、その上で現実の介護場面でどうしたらよいのか、どうできるか、一緒に話し合う機会がもて、身体拘束以外の解決方法を試みてみることは貴重な体験になると思います。施設におまかせという受身であったり、ユーザーとして権利を主張するだけということではこの問題はまず解決しません。厳しい言い方ですが、ご家族の役割を果たすという覚悟、施設職員と一緒に問題を考えて行くという姿勢で臨まれるときにはじめて道がひらかれるものであると思います。

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